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【冬コミ】 帰り道 【なおれい】


冬コミ新刊の内容です。

「だーれだっ」

れいかの視界が暗くなる。

「今日は早かったのね、なお」

れいかは落ち着いて応える。

「帰ろう、れいか」

「ええ」

そう言って何事もなかったように二人は歩き出す。

「手、繋ごう、れいか」

少し歩いたところでなおがそう言う。

季節は秋だが、寒さは冬に近い。

何も言わずにすぐにれいかが応え、手を差し出す。

「今日は一段と冷えるね」

「そうね」

時間は五時を回っている。

周りはすっかり暗くなっていて、冷たい風が時より吹いてくる。

「なおの手、暖かいわ」

そう言ってれいかが、なおの手をしっかり握る。

「れいかの手も暖かいよ」

「ありがとう、なお」

お互いの手を強く握り合い、そのまま二人は歩いて行く。

「ねぇ、れいか」

五分ほど歩いたところだった。

「なに?」

突然なおが止まり、れいかもそれに気づいて歩みを止める。

「ちょっといいかな?」

「どうしたの、なお?」

なおが周りをきょろきょろと見る。

れいかはあまり見ない、なおのその様子を不思議そうに眺める。

「ちょっと寒いから・・・」

なおがさっと前に出る。

「あっ」

なおがれいかを引っ張り、自分の方に引き寄せる。

あっという間の出来事だった。

なおがれいかを抱きしめる。

「なお、どうしたの?」

突然のことでれいかは少し驚いているようだ。

「うーん、久しぶりにこうしたかったから」

なおが少し悩んでからそう応える。

「れいかのこと、抱きしめたいんだ」

まっすぐにそう言う。

「ふふ、こうするの久しぶりね」

れいかも嬉しそうな表情で言う。

「でも、人目も気にしないと」

「うん、そうだね」

れいかに指摘されるがあまり気にしていないようだ。

二人はちょうど木の陰に隠れる場所にいる。

人通りが少ない道なのか、人に見られてはいない。

「なお」

少し間をおいてれいかが口を開ける。

「なに、れいか?」

「そろそろ帰らないと・・・」

暗さはあまり変わらないが、時間は経っていく。

「もう少しいい、れいか」

「仕方ないわね、なお」

甘えるような声でなおが言う。

それにれいかは苦笑する。

「れいか、暖かい」

「そうね、なおも暖かいわよ」

二人はなかなかその場を動こうとしない。

「ねぇ、れいか」

「なに、なお?」

「もっとぎゅーってして」

「もっと?」

「うん」

もう十分と思えるくらい二人は強く抱きしめあっている。

「仕方ないわね、なお」

れいかが少しだけ力を緩め、再びなおの体を強く抱きしめる。

「こう、なお?」

「うん」

前とさほど変わらない。

だが、なおはとても嬉しそうな表情をしている。

「れいか、大好き」

なおが自然に言う。

れいかも慣れているのか顔を赤くしたりはしない。

そのままじっと動かず、何も言わない。

「なお、大好きよ」

少しだけ間を置いてれいかも同じ言葉を言う。

お互い同じタイミングで微笑み合う。

周りのことなど一切気にしていない。

二人だけの空間に入っている。

少しして、どちらからともなく体を離す。

まっすぐ目線を合わせて見つめ合う。

ゆっくりと顔が近づいていく。

チュッ

目を閉じて唇を合わせる。

そのままじっと動かない。

お互いの唇の温かさを感じ取っている。

寒い風が吹き、遠くから車の音が聞こえてくる。

ようやく二人は重ねあわせていた唇を離した。

二人の横をライトをつけたトラックが通過する。

運転手から見えない角度にいたようだ。

通過する間だけ二人は体を離していた。

「もうちょっと、いい?」

そう言いながら、なおはれいかに近づいていく。

「いいわよ、なお」

応えながられいかが後ろに手をまわす。

「あったかいね」

お互いを強く抱きしめ合う。

二人を邪魔するものは当分現れそうにない。

何も言わずに体を密着させる。

お互いの体温が伝わり、外の寒い風も気にならないようだ。

少ししてから、二人同時に体をゆっくりと離す。

「帰りましょう」

「うん」

手をつないで歩き始める。

こっちの場合は周りを気にしていない。

「なお」

「ん?」

れいかが自分の手をなおのに絡ませる。

それでもなおは恥ずかしがったり、周りを見たりしない。

二人にとってはごくごく普通のことらしい。

寒風が吹き付けるが、身震いしたりしない。

笑顔で二人は帰り道を歩いて行った。

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